【目的】
本研究では,地域イノベーションの創出など今後の役割がますます重要になると言われている地方の産学連携に着目し,
研究代表者や研究分担者が各大学の最前線で様々な産学連携活動を推進しているという立場から,その実状を明らかにすることを目的とする.
具体的には,新潟大学,島根大学,岡山大学,長崎大学の4大学について,
(1)共同研究契約の情報を調査・分析し各大学の共同研究の実状を明らかにすること,
(2)これらの結果を比較し,状況の共通点や相違点を明らかにすること,
さらに,その結果を基に
(3)産学連携活性化や地域イノベーションの創出に向けた問題点や課題を抽出すること,
を主な目的とする.
研究成果は,今後の産学連携活動の効果的な実施や地域イノベーションの創出に向けた産学連携活動の新たな展開につなげていくことが期待できる.
【具体的な研究内容】
1)新潟大学,島根大学,岡山大学,長崎大学の4大学について,
@共同研究契約内容を調査し,分析を行い,共同研究の状況を明らかにする.
A各大学の状況を比較検討し,共通点や相違点を明らかにする.
2)他大学との比較
@可能な限り他大学の共同研究の状況について,調査・分析を試みる.
A大学間の比較を行い,問題点を検討する.
3)産学連携活動の活性化や地域イノベーションの創出に向けて
@地方における効果的な産学連携の実施や地域イノベーションの創出に向けた
問題点や課題を抽出し,課題の解決に向けた検討を行う.
【得られた研究成果の概要】
本研究では,地域イノベーションの核となり得る地域の産学連携の状況を明らかにする目的で,大学の共同研究の実施状況の調査・分析を試みた.
新潟,岡山,島根,長崎の4つの大学について,共同研究契約に基づき,共同研究の実施状況の整理,分析を試みた.統一した整理・分析が行えるように,整理・分析の方法を検討し,4つの大学の共同研究の整理・分析を行い,方法が有効であることを確認した.
さらに,確立した方法で,地方の国立大学法人を中心に15大学の共同研究の実施状況を整理・分析した.調査期間は,7大学で2004〜2013年度の10年間,12大学で2009〜2013年度の5年間であり,同時期の19の大学の共同研究の実施状況を明らかにでき,比較することが可能となった.
企業を相手先とする共同研究については,大企業と中小企業とに分けて,それぞれについて相手先の地理的分布やその変化,研究費受入額の差異などを明らかにすると共に,相互に比較した.その結果,多くの大学では,関東地方の企業との共同研究を増加させる一方で,大学所在地県の企業(特に中小企業)との共同研究を減少させる,あるいは,増加させられない傾向にあることが明らかになった.また,研究費受入額は,関東に位置する企業との共同研究で高くなる傾向があり,大学所在地県の企業との共同研究では50万円程度の小規模な共同研究が多いことが明らかとなった.
結果は,地域イノベーションの核となる当該地域の大学と企業との共同研究が活発になっていないことを示唆しており,地域イノベーションの創出促進の観点からは大きな問題であると言える.この問題を解決するためには,企業側と大学側の双方の人材育成が必要であり,かつ,地域での産学官金などの連携によるイノベーション創出のためのシステム作りが必要であることを示した.
⇒ 詳細は,こちらの最終報告書をご覧下さい.
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